株式の共同相続

 父が死亡し、相続人は妻、長男、次男の3人でした。遺言はありません。多数の遺産があり、その中に親族が経営する会社の株式が3000株がありますが、遺産分割協議には時間がかかりそうです。株式については、法定相続分の割合によって母2分の1(1500株)、長男・次男が各4分の1(750株)ずつをそれぞれ取得すると考えてよいでしょうか?なお、亡父の遺言はなく、生前贈与等の特別受益は考える必要はありません。

 全ての株式について、相続人3人が法定相続分の割合で準共有することとなります。
 したがって、株数で当然に分割されるのではなく、全ての株式について、母2分の1、長男・次男が4分の1の権利を有することになります(最判昭45・1・22、最判平26・2・25)。
 株式とは株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し、株主は、株主たる地位に基づいて、剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号)、残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などの可分性を有する自益権だけでなく、株主総会における議決権(同項3号)など可分性を有しない共益権も有しています。このような株式に含まれる権利の内容や性質によると、株主の権利は、可分給付だけでなく不可分の給付をも目的にしているので、共同相続人間で当然には分割されないと考えられています。
 また、上記の結論となる理由については、株式の相続については、遺産分割協議にゆだねる方が、事業承継の円滑化に資することや、株式数が法定相続分で割り切れない場合に扱いを異にすることも相当でないとの価値判断もあるものと考えます。