新型コロナウイルス関連の緊急事態宣言と賃貸管理会社の対応

 当社が賃貸管理している賃貸ビルのテナントから、「新型コロナウイルス関連の緊急事態宣言により、営業を自粛しているため売り上げが立たなくなったので、賃料が支払えない。貸主と賃料の減免か支払猶予について協議したい。」との連絡がありました。
 賃貸管理会社としては、どのように対応したらよいでしょうか?

  1. まず、テナントが休業要請の対象となる事業を行っているのか、実際に営業をしていないのか、収入の減少がどの程度なのか、テナントの申し出に合理的な理由があるかという点を調査・確認する必要があります。
  2. 国の緊急事態宣言は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて出されたもので、同法45条2項により、都道府県知事が休業要請の対象となる施設等を指定することになります。神奈川県では、「神奈川県緊急事態措置対象施設」として、休業要請等を受ける施設の一覧が公表されています。
    (神奈川県HP https://www.pref.kanagawa.jp/docs/bu4/covid19/200414_sisetu.html)
  3. テナントが休業要請対象であったり、そうでないとしても、市民の外出自粛要請によって、売り上げの大幅な減少が認められる場合には、それらの調査結果を家主に説明し、借主の賃料減免等の要請に対応することを納得・了解してもらえるかがポイントとなります。
  4. なお、売り上げの大幅な減少などがあった場合でも、テナントは家賃の支払いのために国や地方自治体による給付金・協力金などの補助や、政府系金融機関・民間金融機関による実質無利子の融資などの支援を受けられる場合があります。
    (厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000624607.pdf)
  5. そこで、管理会社が、貸主を説得する前に、テナントに対して、これらの制度の利用や社会保険労務士への相談を勧めることで、賃料支払いの問題が解決できる場合もあります。
  6. 以上のやりとりの後、実際に、貸主・借主間で、賃料支払の猶予や一部免除等の合意が成立する見込みが立った場合には、合意書を作成する必要があります。
  7. この合意書は、以下の事情も考慮して、作成する必要があります。そのため、税理士への確認、家賃保証会社との事前協議が必要となる場合があります。
    1) 貸主が賃料の減免について、税務上の優遇措置を受けたい場合には、合意書がその要件を満たす内容となっているか。

    2) 家賃保証会社がいる場合は、家賃保証会社が貸主に対して賃料を立替払いしてしまわないか。支払猶予賃料、減免された賃料の支払方法について、合意書作成前に協議のうえ、調整する必要がある。
    3) 支払猶予賃料について、家賃保証会社の保証対象となるか。