会社の労災申請への協力義務

 従業員が、会社の業務中に事故にあったと主張していますが、会社としては疑わしいと考えています。その場合でも、会社は労災保険給付を受けるのに必要な証明を交付しなければなりませんか?

 なお、労働者災害補償保険法施行規則23条2項では、事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならないと定めています。

 その必要はありません。労働者から労災申請の希望が伝えられた場合、事業主としては、労災に該当するのかどうかの要件該当性を争っているときにまで、請求書の記載事項について証明したり、その他積極的にその申請に協力したりする法的義務を負うことはありません。判例上も、労働者災害補償保険法施行規則23条2項は、事業主が労災の該当性を争っている場合にまで上記のような義務を負わせるものとまではいえないと判断しています(大阪地判平成24年2月15日判決 労働判例1048号105頁)。

 

 また、労働者災害補償保険法施行規則23条によって、事業主の助力義務及び証明義務が規定されていますが、実際には上記のとおり、労災の該当性について労使間で見解の相違が生じ、事業主が証明を拒むことによって申請者(労働者)が労災認定の判断を受ける権利を阻害されることのないよう、事業主が証明を拒む場合には、労働基準監督署は事業主の証明印がなくても申請を受け付けることができるとされています(東京地判平成22年8月25日判決 LLI/DB 判例秘書登載)。