株券を不発行とするための具体的手続

「当社は、株券を発行する」旨の定款の定めを削除する場合、どのような手続が必要なのでしょうか?

  1.  株券発行会社が、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めを削除する場合には、以下の手続を経る必要があります。
  2.  取締役会において、以下の事項を決定し、株主総会を招集します(会社法298条4項・1項)。
    1.  株主総会の日時及び場所
    2.  株主総会の目的である事項(議題)があるときは当該事項
  3.  株主総会を開催し、株券発行に係る定款一部変更の議案を決議します。
    1.  定款の変更は、株主の利害に重大な影響を及ぼすことから、原則として、株主総会の特別決議によって行う必要があります(会社法466条、30条2項11号)。
    2.  特別決議とは、「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席(委任状による出席も含む)」と、「出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって可決」することを要する決議をいいます。
  4.  会社は、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款変更の効力が生じる日の2週間前までに、以下の事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者に対して、各別にこれを通知しなければならないとされています(会社法218条1項)。
    1.  その株式の係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
    2.  定款変更の効力が生じる日
    3.  ②の日に当該株式会社の株券は無効となる旨
  5.  会社は、定款変更の効力が生じた日から2週間以内に定款変更の登記手続を行う必要があります(会社法915条1項、911条3項10号)。
  6.  発行済株券の回収の必要性
    1.  上記手続きを行った結果、すでに発行している株券は無効になりますが、この株券を会社が回収する必要はありません。
    2.  ただし、株主に対して、株券が無効になったことを周知させるために、しばらくの間は、株主総会の招集通知に「当社は、平成○年○月○日をもって、株券不発行会社となりましたので、現在お持ちの当社の株券は無効になっております。今後は、株式の譲渡については、株主名簿の名義書換えの請求で対応いたしますので、当社宛ご連絡ください。」などと記載しておくことが望ましいと思われます。