不正行為を働く取締役の排除

  1.  株式会社A社には、B社長、C専務、D常務の3名の取締役と監査役のEがいました。
  2.  D常務は自ら取引先に出向いて売掛金を回収していました。
  3.  ところが、C専務が出荷した機械部品の数量に比して、回収した売掛金の額が少ないことに疑問を持ち、独自に取引先にA社への売掛金の支払内容を確認したところ、支払のために発行された手形の一部がA社の口座で取り立てられていないこと、そして、その手形を受領したのがD常務であることが判明しました。
  4.  しかし、A社には、その取引先からの発注書や注文指示に関するメール等の資料が保存されておらず、売掛金発生を確認できる根拠資料が全く残っていませんでした。
  5.  また、さらに調査を進めると、D常務は他にも同様の手口で多額の売掛金を横領していることが判明しました。
  6.  A社としては、直ちにこの事実をD常務に示して、退任を迫りたかったのですが、証拠が乏しいことから、D常務に言い逃れをされて、退社後に自宅不動産を処分する等して行方をくらますのではないかと心配しました。
  7.  そこで、B社長は、D常務に対して、出来るだけ解任と同時に一気に責任を認めさせて、損害回復のためにD常務の財産を押さえたいと考え、当事務所に相談に来ました。
  8.  当事務所では、D常務が確実に出社・在籍するタイミングを狙って、全員出席総会を開催する手はずを整え、その場で解任決議が出来るようにするとともに、責任を認める念書、退職金や未払い給与を損害の弁済に充てる旨の合意書を準備しました。
  9.  そして、責任を追及する当日に、担当弁護士とともにB社長がD常務と面談し、横領に関する責任を認めさせ、役員の解任と追加役員の選任手続きをその日のうちに行い、役員の欠員状態を回避するとともに、その後の損害の回復を有利な形で進めることができました。
  10.  役員や社員の不正の問題については、疑いが生じた時点で、すぐに相談いただくことで、将来の訴訟等の紛争に発展することを見据えながら、証拠収集や懲戒処分等に向けた準備を進めることができます。