所在不明者除外決定

 当管理組合のマンション(総戸数30戸、1戸につき1議決権)は、建築後既に50年が経過しており、相続の発生等によって所在不明になっている部屋(区分所有建物)が5戸あります。マンションが老朽化してきたことから、令和8年10月に建物の建替え決議を行う予定ですが、20戸の所有者は建替えに賛成する見込みです。建替え決議をするには、当マンションでは5分の4(24戸)以上の区分所有者の賛成が必要ですが、現在では、総戸数の3分の2(20戸)しか賛成者がいません。どのような対処をすれば、マンションの建替え決議を可決させることができるでしょうか?

  1.  結論として、令和8年4月1日施行の改正区分所有法により、所在不明者の議決権を決議から除外する決定を得れば、建替え決議に20戸が賛成することで、建替え決議を可決させることができます。
  2.  すなわち、所在等不明区分所有者以外の区分所有者又は管理者は、5戸の部屋の区分所有者が所在等不明であることを疎明したうえで、裁判所に除外決定の申立をして、裁判所に除外 決定をしてもらうことで、当該5戸の部屋を建替決議の母数から除外することができます(改正区分所有法62条1項)。そうすると、20戸の区分所有者が決議に賛成することで、25分の20、すなわち5分の4の賛成を得ることができるため、建替決議を成立させることができます。
  3.  なお、5部屋が所在等不明であることは、当該区分所有者の住民票を取得したり、相続が発生している場合は相続調査をする等して、それでも区分所有者あるいはその相続人の所在等が分からないという状況にあることが必要です。
  4.  なお、建替決議の対象となるマンションが、耐震性が不足していたり、外壁落下のリスクがあったり、給排水設備の劣化が著しく衛生上有害となるおそれがある等、一定の要件を満たす場合は、建替決議の要件は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決議で足ります。

 

改正区分所有法62条(建替え決議)
1 集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議

 決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地

 若しくはその一部の土地又は当該建物の 敷地の全部若しくは一部を含む

 土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)を

 することができる。
2 建物が次の各号のいずれかに該当する場合における前項の規定の適用に

 ついては、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
 一 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)

  又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣

  が定める基準に適合していないとき。
 二 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは

  条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していない

  とき。
 三 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剝離し、落下するこ

  とにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める

  基準に該当するとき。
 四 給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著

  しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る。)の損傷、腐食その

  他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大

  臣が定める基準に該当するとき。
 五 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第十四条第五

  項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定

  める基準に適合していないとき。