共用部分の変更決議

 私はあるマンション(総戸数100戸、1戸につき1議決権)の理事長を務めています。理事会において、共用の駐輪スペースが余っていることから、この駐輪スペースの一部を室内ゴミ庫に改装するために共用部分の変更決議を、令和9年6月に開催されるマンションの通常総会に上程し、区分所有者の賛否を問うことになりました。通常総会において、この共用部分の変更決議において、60戸の区分所有者が出席し、50戸の区分所有者が賛成しました。共用部分の変更決議は可決要件を満たすでしょうか?

  1.  令和8年4月1日施行の改正区分所有法により、共用部分の変更決議は出席者多数で決議が可能になり、本問のような状況で共用部分の変更決議を成立させることができるようになりました。 
  2.  すなわち、改正前の区分所有法17条では、共用部分の変更の決議は総区分所有者の頭数及び議決権の4分の3以上の多数が可決要件でした。そのため、改正前の区分所有法下では、75戸以上の賛成が必要となるため、50戸の区分所有者の賛成のみで共用部分の変更決議を成立させることはできませんでした。
  3.  これに対し、改正区分所有法では、共用部分の変更の決議は、総区分所有者の過半数及び総議決権数の過半数が出席したうえ、出席区分所有者の頭数及び議決権の4分の3以上の多数が可決要件になりました。
  4.  したがって、改正区分所有法下では、本件決議は全区分所有者100戸のうち、過半数を超える60戸の区分所有者が出席しており、頭数の過半数・総議決権数の過半数という定足数の要件を満たします。
    また、出席した区分所有者60戸のうち50戸が賛成しているため、出席した区分所有者の頭数及び議決権の4分の3以上という可決要件も満たします。したがって、共用部分の変更の決議は可決要件を満たしています。
  5.  なお、共用部分の変更については、高経年化した区分所有建物の安全性を確保するため、また、区分所有建物の長寿命化を図るために、共用部分の変更決議を円滑化する必要性が高いとの理由から、例外的に、①共用部分の瑕疵の除去等に関する場合、②高齢者・障害者の利便性向上のための共用部分の変更の場合については、出席した区分所有者の頭数及び議決権の3分の2以上で可決できる旨の定めもなされています(改正法17条5項)。

改正区分所有法17条(共用部分の変更) 
1 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除

 く。第五項において同じ。)は、集会において、区分所有者(議決権を

 有しないものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)の過半数

 (これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の

 者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合に

 あつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有

 者及びその議決権の各四分の三(これを下回る割合(二分の一を超え

 る割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の

 多数による決議で決する。
5 共用部分の設置若しくは保存に瑕疵かしがあることによつて他人の

 権利若しくは法律上保護される利益が侵害され、若しくは侵害される

 おそれがある場合におけるその瑕疵の除去に関して必要となる共用部

 分の変更又は高齢者、障害者等(高齢者、障害者等の移動等の円滑化

 の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二条第一号に規

 定する高齢者、障害者等をいう。)の移動若しくは施設の利用に係る

 身体の負担を軽減することにより、その移動上若しくは施設の利用上

 の利便性及び安全性を向上させるために必要となる共用部分の変更に

 ついての第一項及び第三項の規定の適用については、これらの規定中

 「四分の三」とあるのは、「三分の二」とする。