集会決議要件の緩和
令和8年4月1日から施行される改正区分所有法では、集会決議の円滑化という目的で各種の集会決議が成立しやすくなるよう改正されたようですが、具体的にどのような改正がされたのでしょうか?
- 改正法の内容
- 改正区分所有法では、集会決議に関し、大きく2つの改正がなされました。
- 一つは、裁判所の決定により、所在不明になっている区分所有者を集会決議の定数から除外できる制度が新設されました。
- もう一つは、特定の集会決議について、定足数が設けられたうえで、出席者多数決による決議で可決できるような改正がなされました。
- 所在不明者除外決定
- 改正前の区分所有法では、区分所有者総数を母数とする多数決において、所在等不明者の票は反対票と同様に扱われていました。これにより、所在等不明区分所有者が多数いる区分所有建物では、決議が成立しにくくなり、必要な管理等が行えなくなるおそれがあるとの問題点が指摘されていました。また、所在等不明区分所有者は、類型的に、区分所有建物の管理について関心を失っていると評価することもできます。
- そこで、改正区分所有法では、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき、当該区分所有者を所在等不明区分所有者として、集会における議決権を母数から除外する制度が新設されました(改正区分所有法38条の2)。
- 所在不明となっている区分所有者以外の区分所有者(以下、「一般区分所有者」といいます。)又は区分所有建物の管理者は、裁判所に対し、所在等不明者を除外して集会決議できる旨の決定を行うように請求することができます。裁判所は、上記請求を受けて、区分所有者を知ることができない、又はその所在を知ることができないと認める場合に除外決定をします。
- 除外決定により、所在等不明者は区分所有者として集会決議の母数から除外されるので、招集通知を送る必要がなくなります(改正区分所有法35条1項)。また、定足数が決まっている事項について、定足数算定の母数から所在等不明者を除外できるようになります(改正区分所有法34条3項等)。
- 出席者多数決による決議
- 改正前の区分所有法下では、特別決議や規約に別段の定めがない区分所有建物での普通決議については、全区分所有者による絶対多数決が必要とされていました。
- これにより、集会に出席しない者は反対者と同様に扱われ、決議に必要な賛成が得られず、円滑なマンション管理が阻害されるおそれがあるとの指摘がされていました。
- そのため、集会における一定の議事については、出席した区分所有者及びその議決権の多数決によって決議を可能とする仕組みを設けることで、集会での意思決定の円滑化が図られることとなりました。具体的には、普通決議以外の決議については、法律上、原則的な集会の定足数を区分所有者及び議決権の過半数とした上で、①普通決議、②共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)の決議、③復旧決議、④規約の設定・変更・廃止の決議等といった区分所有権の処分を伴わない決議については、出席した区分所有者及びその議決権の多数で決するとの改正がなされました(改正区分所有法39条1項等)。
- もっとも、区分所有権の処分が内容となる決議に関しては、全区分所有者の意思を反映すべき事項であるから、出席者多数で可決する決議の対象にはなりませんでした。
改正区分所有法38条の2(所在等不明区分所有者の除外)
1 裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ること
ができないときは、当該区分所有者(次項において「所在等不明区分所
有者」という。)以外の区分所有者(以下この項及び第三項において「
一般区分所有者」という。)又は管理者の請求により、一般区分所有者
による集会の決議をすることができる旨の裁判をすることができる。
2 前項の裁判により所在等不明区分所有者であるとされた者は、前条
の規定にかかわらず、集会における議決権(当該裁判に係る建物が滅
失したときは、当該建物に係る敷地利用権を有する者又は当該建物の
附属施設(これに関する権利を含む。)の共有持分を有する者が開く
集会における議決権)を有しない。
3 一般区分所有者の請求により第一項の裁判があつたときは、当該一
般区分所有者は、遅滞なく、管理者にその旨を通知しなければならな
い。ただし、管理者がないときは、その旨を建物内の見やすい場所に
掲示しなければならない。
改正区分所有法35条(招集の通知)
1 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に 、会議の目的
たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者(議決権を有しない
ものを除く。)に発しなければならない。ただし、この期間は、規約
で伸長することができる。
改正区分所有法第39条(議事)
1 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席し
た区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各
過半数で決する。