団地内建物一括建替え決議の多数決要件の緩和

 私が専有部分を所有しているマンションは、一団の敷地内にある3棟のマンションのうちの1棟で、各マンションの区分所有者らが敷地や集会所等の附属設備を共有する、団地型マンションになります。現在、団地管理組合において、老朽化により3棟のマンション全てを建て替える話が出ています。
区分所有者の中には建て替えに反対している方もいますが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法により建替えをしやすくなったと聞きましたが、具体的にどのような点が改正されたのでしょうか?

  1.  改正前区分所有法では、団地内建物の全てを一括で建替えをする決議要件として、①団地内建物の区分所有者及び議決権(敷地の共有持分割合による)の5分の4以上の賛成(全体要件)と、②各棟ごとの管理組合での区分所有者及び議決権(各区分所有建物における共用部分の割合による)の3分の2以上の賛成(各棟要件)が必要とされていました(改正前区分所有法70条1項)。 
  2.  改正前区分所有法による団地内建物一括建替決議制度は、平成14年(2002年)にできた制度ですが、5分の4以上の賛成が必要という全体要件が高いハードルであり、また、各棟要件について戸数の少ない棟では相対的に一票の反対票の影響力が大きいこと等から、これまでこの制度はそれほど利用されていませんでした。
  3.  もっとも、今後、単棟型マンションと同様に、団地型マンションにおいても建物の経年劣化・老朽化が進行していくことが予想されます。団地型マンションは各建物の建築時期が同時期であることが多く、団地全体を一括して設計することも多いため、一括建替えの方が合理的であるケースも多いといえます。
  4.  そこで、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、上記状況を踏まえ、一棟の建物の建替えと同様、団地の建物全体についても、再生の円滑化のために、反対者の権利にも配慮しつつ、団地全体の建替え決議の要件が緩和されました。
  5.  まず、団地内建物の一括建替えの全体要件については、改正区分所有法の下では、原則として、改正前(現在)の要件を維持しつつも(区分所有法70条1項)、以下の事由(緩和事由)がある場合には、例外的に、団地管理組合における決議要件が区分所有者及び議決権の4分の3以上に緩和されました(改正区分所有法70条2項)。この緩和事由は、いずれの建物についても必要ですが、団地内建物の全てに同じ事由が存在する必要はなく、各棟毎に異なる事由が存在する場合であっても、緩和要件を満たすことになります。
    1.  耐震性の不足
    2.  火災に対する安全性の不足
    3.  外壁などの剥落により周辺に危険を生ずるおそれ
    4.  給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
    5.  バリアフリー基準への不適合
  6.  また、各棟要件については、積極的に賛成を数えるのではなく、各棟の区分所有者の3分の1を超える反対がない限り、各棟要件を満たすものとされ、事実上、要件が緩和されました(改正区分所有法70条1項ただし書)。
     反対数をカウントする仕組みにしたのは、団地関係においては、基本的に団地関係者全体の意思に従うことが相当であり、全体要件を充足していれば、各棟において建て替えを行う合理性があると推認されることによります。
  7.  例えば、1棟あたり10戸で、A棟からC棟までの合計3棟(合計30戸)の団地の建物全体の建替決議をする際、A棟について5名が賛成、3名が反対、2名は棄権という決議状況であり、B棟・C棟については区分所有者10戸のうち9名が建替決議に賛成していたとします。
     この場合、改正前区分所有法では、A棟について、10×2/3=6.6666なので、3分の2を超えるには7名以上の賛成が必要ですが、、改正区分所有法の下では、3分の1を超える4名の反対はないため(10×1/3=3.3333)、建替決議が成立することとなります。