賃貸ビル事業者の民事再生

  1.  神奈川県内の資本金約50億円の第三セクターの会社につき、民事再生を申立て、出資者の地方公共団体・民間企業等との調整を行い、スポンサーに第三セクターの経営を承継させました。
  2.  この会社は、オフィスビルの賃貸事業を主として行っていましたが、バブル崩壊後の不況によって、賃料相場が下落したこと等により、オフィスビルの稼働直後から、毎年赤字状態が続いており、公租公課の滞納や、借入金の返済遅滞等が発生し、約10億円以上の債務超過に陥りました。

     会社の方では、私的整理に関するガイドラインに沿った任意整理を行うこと等も検討しましたが、主要債権者・株主・自治体関係者等の関係者の利害調整が困難を極め、また、会社の再建を図るには、大幅な債権カットが必要となり、法的整理によらずに、多数の債権者に大幅な譲歩を得ることが難しかったため、民事再生の申立を行うこととしました。

  3.  この会社の民事再生手続において、再生計画案を検討したところ、公租公課及び借入金の減免、固定資産の評価替えによる減価償却費の軽減を実現すれば、直近のキャッシュフローは黒字であり、自力再建が可能と考えられたことから、スポンサー型ではなく、自力再建型の再生計画案を策定しました。
  4.  具体的には、再生債権者に対して、再生計画認可決定確定の翌年から10年間かけて、元本の約10%を返済することを骨子とする再生計画案を作成し、無事、多数の再生債権者の同意を得て、再生計画案が認可されました。
  5.  その後、この会社は、再生計画案に従った債務の履行を完了し、オフィスビルでの賃貸事業を継続しています。