建築基準法の改正と確認申請の厳格化

 令和7年(2025年)4月1日の建築基準法の改正により、いわゆる再建築不可物件の大規模修繕等が事実上できなくなったと聞きましたが、宅建業者として再建築不可物件の売却仲介の依頼を受けた場合、注意しなければならない点はあるでしょうか?

  1.  改正建築基準法の内容
    1.  2025年4月1日に改正建築基準法が施行され、木造2階建ての建物の大規模修繕・大規模模様替(以下、併せて「大規模修繕等」といいます。)にも確認申請が必要になり、その結果、接道要件を満たさない再建築不可物件については、大規模修繕等の確認申請が下りないので、大規模修繕等ができなくなりました。
    2.  そもそも、2025年4月1日施行の改正建築基準法は、省エネ基準に適合させる必要のある建物の範囲を拡大し、また、木造2階建ての一般住宅等、これまで「4号建築物」として、新築・増築・大規模修繕等について審査の省略が認められていた建物について安全性を欠く工事が問題になったため、確認申請の対象を拡大し、審査の充実・厳格化が図られることとなりました。
       
  2.  改正前の4号建築物について 

    1.  改正前の建築基準法第6条1項の「4号建築物」、すなわち、都市計画区域内に建てられるⅠ①「2階建て以下」②「延べ面積500㎡以下」③「高さ13m以下」④「軒高9m以下」のすべてを満たす木造建築物と、Ⅱ①「平屋」②「延べ面積200㎡以下」の非木造建築物に該当すれば、大規模修繕等は確認申請をすることなく行うことが可能でした。
    2.  そのため、小問1の工事を行うには建築確認申請が必要となります。


  3.  改正建築基準法と2号建築物

    1.  これに対し、改正建築基準法では、第6条1項の定めに、「4号」がなくなり、木造2階建て住宅は、延べ面積が小さくても、全て「2号建築物」に分類され、大規模修繕等に確認申請が必要となりました。
    2.  改正後の2号建築物で大規模修繕等について確認申請と完了検査が要求される建物は、「前号に掲げる建築物(特殊建築物)を除くほか、2以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超える建築物」となっています。したがって、100㎡未満の小規模な木造建物であっても、2階以上の建物なら、大規模修繕等に確認申請と完了検査が必要となります。
    3.  また、平屋の木造建物や軽量鉄骨造りの建物でも、床面積が200㎡を超える場合には、大規模修繕等に確認申請と完了検査が必要となります。


  4.  再建築不可物件のリフォーム
    1.  設例のケースのように、接道要件を満たさない木造2階建ての建物について、改正前は4号建築物として確認申請が不要でしたが、改正後は2号建築物として大規模修繕等を行う際にも確認申請が必要となります。
    2.  しかし、接道要件を満たさない木造2階建て建物ですと、大規模修繕等の確認申請をしても、確認は下りません。
    3.  なぜなら、木造2階建ての建物では、大規模修繕等の確認申請には、図面(付近見取り図、配置図、平面図、立面図、断面図、求積図など)が要求されます。
    4.  配置図には「接道状況」も記載され、確認審査では「敷地関係規定」も審査されるため、接道要件を満たさない敷地の場合、建築基準法43条2項の許可・認定を受けて接道要件をクリアできないと、大規模修繕等の確認申請が下りません。そのため、再建築不可物件では、確認申請が下りず、大規模修繕等ができなくなってしまいます。
  5.  宅建業者の留意事項

    1.  当初の建築時に建築基準法違反となっている再建築不可物件については、大規模修繕等を行おうとしても確認申請が下りないので、宅建業者としては、これを前提に買い手を探すこととなりますが、現実には買い手を探すことは困難と思われます。
    2.  仲介業者としては、売却仲介の依頼を受けた土地建物が、なぜ再建築不可物件なのか(既存不適格なのか、もともと建築時に建築基準法違反の建物なのか)、当該土地建物について大規模修繕等について確認申請が下りるのか、難しい調査・判断を行わなければならなくなります。
    3.  現実的には、買主候補者が現れた場合、買主候補者が予定しているリフォーム工事等の希望を確認し、建築士に相談の上、確認申請が必要な工事に該当するか否か、また、場合によっては、確認申請を事前にしてもらい、確認が下りてから、売買契約を締結するのがよいものと考えます(あるいは、確認申請が下りなかったら、売買契約を白紙解除できるとの特約を定めておくという方法もあります。)。
    4.  なお、仮に、買い手がついて再建築不可物件の売買の仲介をすることとなった場合でも、重要事項説明書には、建替ができない物件であること、大規模修繕等についても、建築基準法改正法の施行により、確認申請が必要となるため、大規模修繕等についても行うことができないこと、建替・大規模修繕等ができないことが容認事項であるため、これが契約不適合には該当しないこと等を説明をする必要があります。

 

改正建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)
1 建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場

 合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又

 は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大

 規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げ

 る建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、

 その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条

 例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、

 構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定

 で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることに

 ついて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築

 主事等」という。)の確認(建築副主事の確認にあつては、大規模建築

 物以外の建築物に係るものに限る。以下この項において同じ。)を受け、

 確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計

 画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号

 若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようと

 する場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定

 する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若

 しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を

 建築しようとする場合も、同様とする。
 一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供

  する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの
 二 前号に掲げる建築物を除くほか、二以上の階数を有し、又は延べ面積

  が二百平方メートルを超える建築物
 三 前二号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画

  区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて

  指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成十六年法律第百十号)第七

  十四条第一項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都

  道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部に

  ついて指定する区域内における建築物
8 第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、

 大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。

改正建築基準法第7条(建築物に関する完了検査)
1 建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通

 省令で定めるところにより、建築主事等の検査(建築副主事の検査にあつ

 ては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。第七条の三第一項に

 おいて同じ。)を申請しなければならない。
5 検査実施者は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物

 及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国

 土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証

 を交付しなければならない。