借地借家法が適用される建物とは
当社は商業施設を運営していますが、隣接地で期間20年の土地の賃貸借契約を締結し、5階建て鉄筋コンクリート造での自走式立体駐車場を建設する予定です。この駐車場は、車輌転落防止のための高さ1.5m程度の壁を設けますが、駐車場の内外を遮断する壁は設けません。入り口もバーゲートシステムで入出庫管理し、シャッターは設けません。ただし、自走式立体駐車場を建設するために、建築確認は取得します。
このような自走式立体駐車場を建設するために土地を賃借した場合、借地借家法の借地権に関する規定が適用されるのでしょうか?
- このような自走式立体駐車場を建設するための土地賃貸借契約については、借地借家法は適用されず、民法が適用される土地賃貸借契約となります。
その理由は、借地借家法が適用される土地の賃貸借契約は、「建物の所有を目的とする」ものであることが必要であるところ(借地借家法第2条1号)、質問の事例による自走式立体駐車場は、借地借家法が予定している「建物」には当たらないと考えられるからです。 - 民法上の土地賃借権及び地上権のうち、「建物所有目的」のものだけが特別法である借地借家法の適用対象となり、土地利用権として強い保護が与えられます。
建物所有目的の土地の地上権・賃借権に限って強い保護を与えたのは、借地人は、相当な費用を投じて建物を建築した上で、その建物を継続して占有・使用収益し、これを基礎として日常生活や営業活動を行うことから、借地人による住居や事業の安定を継続的に保障する必要があるためです。
そのため、平置きの駐車場・資材置場として土地を貸す場合のように、建物所有を目的としない土地賃貸借契約については、借地借家法上の借地権としての強い保護は与えられません。 - 借地借家法上の借地権が認められるための建物の意義
- 立体駐車場を所有するための土地賃貸借契約について、借地借家法上の借地権として保護されるためには、土地上に建てられる立体駐車場が「建物」である必要があります。
- 過去の裁判例では、借地借家法施行前の旧借地法1条に定められた「建物」について、「土地に定着して建設された永続性を有する建物で、屋蓋、周壁を有し、住居、営業、貯蔵等の用に供される独立した不動産をいう」(京都地裁昭和60年10月11日)と判断されています。
つまり、①土地への定着性、②外気分断性、③用途性(一定の用途に供することができる状態)という3つの要件を備えていることが建物の要件となります。 - また、判例上、建物として固定資産税がかかっているかどうかという点と、借地借家法上の「建物」にあたるか否かは無関係とされています(最判昭和28年12月24日判タ37号47頁)。
- 本件の自走式立体駐車場は、一見建物のように見えますが、外界と内部を遮断する壁がなく、入り口もシャッター等で外界と区分されていないので、②外気分断性の要件を満たさず、「建物」とはいえません。このような建物とはいえない建築物(構築物)を所有する目的で土地を賃借した場合は、借地借家法が適用される借地権とはなりません。
- なお、建築基準法上の「建築物」(建築基準法第2条1号)のうちの主なものは、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものと、これに付随する門や塀、地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所・店舗・倉庫等と定義されており、自走式立体駐車場も、この「建築物」に該当します。
そのため、自走式立体駐車場を建設する際には建築確認申請(建築基準法6条)が必要となりますが、建築確認が必要な「建築物」であったとしても、借地借家法が適用される「建物」には該当しない場合があることに注意してください。

