借地上の建物の建替え
【小問1】昭和の時代から貸している借地上に借地人が木造の自宅建物を所有していますが、築後相当期間が経過し、老朽化してきました。借地契約書は元々作成していません。借地人は地主である私の了解なく建物を建替えようとしています。借地人による一方的な建替えは認められてしまうのでしょうか?また、地主としてするべきことはあるでしょうか?
【小問2】前問の事案とは異なり、「地主の承諾なく、借地上の建物の増改築をしてはならない。」といった増改築禁止特約のある借地契約書を締結しているケースで、現在、20年の借地期間の15年目を迎えています。借地人から建物を建て替えたいので、承諾して欲しいと言われたましたが、地主として、建替承諾料をもらえれば、建替えは承諾しようと考えています。この場合、注意すべき点はありますか?
【小問1の答】
- 結論
- 借地契約書がなく、増改築を禁止する特約が存在しないため、借地人は、地主の承諾なく、借地上の建物を自由に建て替えることができます。
- 借地人による建替えについて地主が遅滞なく異議を述べないと、旧建物解体時から、非堅固建物なら20年で借地契約が法定更新されてしまうため、地主は遅滞なく異議を述べる必要があります。
- 借地契約における増改築禁止特約の意義
- 法律上、借地人が借地上の建物の増改築をすることは禁止されていません。
借地人は建物を建てるために土地を借りており、建物の建て替えは、本来の借地契約の目的の範囲内の行為であって、借地人に自由に行わせるべきであるからです。 - 他方で、旧借地法は、法定更新が認められる要件として「建物があること」を掲げています(借地借家法も同様です。)。
借地人が建物の建替・増築を自由にできるとすると、建替え等によって建物が新しくなり、地主は、旧借地法による法定更新が認められやすくなってしまうという不利益を被ります。 - そこで、多くの借地契約では、建替えにより地主が不利になることを防止するため、「地主の承諾なく、借地上の建物の増改築をしてはならない。」といった増改築禁止特約が設けられています。
- 本件のように、そもそも借地契約書等がなく、増改築禁止特約の存在が証明されない場合には、増改築禁止特約を合意していたとは認定されません。
- そのため、借地人は自由に建物を建て替えることができます。
- 法律上、借地人が借地上の建物の増改築をすることは禁止されていません。
- 建物の建替えによる借地契約の法定更新
- 借地上の建物の建替えがなされるにあたり、地主が注意しなければならないのは、建替えに伴う契約期間の更新です。
- 旧法借地の場合、地主としては、建物が建替えられたことに対して、遅滞なく異議を述べないと、建替前の旧建物が滅失したときから、非堅固建物なら20年、堅固建物なら30年で契約が法定更新されることとされています(旧借地法7条)。
なお、旧借地法7条の「建替前の旧建物が滅失したとき」とは天災地変で借地上の建物が壊れてなくなった場合だけではなく、借地人が建替えのため取り壊した場合も含まれます。 - したがって、増改築禁止特約がないため、借地人が自由に建替えができる場合でも、地主は借地人の建替えに遅滞なく異議を述べておかないと、借地契約が法定更新されてしまいます。
- 例えば、20年の借地期間の15年目に借地人が建替えを行い、地主が増改築禁止特約がないため、借地人の建替を黙認するときも、法定更新をされたくなければ、建替えに異議を述べる内容証明郵便を送付しておく必要があります。
この異議を述べておかないと、建替えで木造の建物が築造されたときは、旧建物解体時から20年の借地期間の法定更新がされてしまいます。
【小問2の答】
- 結論
建替えを承諾する場合であっても、建替えに異議を述べておかないと、旧建物解体時から20年で借地期間の法定更新がされてしまうため、遅滞なく異議を述べる必要があります。 - 地主が建替承諾料を受領して建替えを認める場合の対応
- 増改築禁止特約がある借地契約について、地主が建替えを承諾する場合であっても、建物の建替えに遅滞なく異議を述べないと、旧借地法7条により建替前の旧建物が滅失したときから、非堅固建物なら20年、堅固建物なら30年で契約が法定更新されてしまいます。
- 本問では、20年の借地期間の15年目に借地人が建物を建て替えようとしていますが、地主において建替えに遅滞なく異議を述べておかないと、旧建物解体時から20年の借地期間の法定更新がされてしまいます。
- 建替承諾料をもらって円満な形で建替えを認める場合、内容証明を出して異議を述べるのは現実的ではありません。
そのため、この場合には、建替承諾合意書を作成し、合意書の中に「借地人が支払う承諾料は増改築禁止特約による建替承諾料のみであり、更新料は含まれない」旨や、「今回の建替えについては、地主は旧借地法7条の異議を出したものとして、法定更新はされないことを確認する」旨を定めておいた方が良いです。

