所有者不明土地建物管理制度等の活用方法
【小問1】宅建業者である当社において建売分譲用地を購入しましたが、隣地に所有者不明の築後90年を経過した廃屋(土地・建物の所有者は同一)があり、建売住宅を建築しても、強風により、隣地の剥がれかかっている外壁の一部や屋根等が飛ばされて、建売の新築建物が被害に遭う危険が高い状況ですし、隣地は雑草や樹木が生い茂っており、見栄えも悪いため、このままでは事業計画を進めることができません。隣地の廃屋を取り壊してもらうために、所有者不明土地建物管理制度を活用することはできないでしょうか?
【小問2】小問1のケースにおいて、当社で所有者の探索をしたところ、登記簿上の所有名義人が数年前に死亡しており、現在の所有者は、特別養護老人ホームに入所しており、判断能力がなく、意思表示もできない高齢者であることが判明しました。所有者が判明した以上、所有者不明土地建物管理制度を活用することはできないと思いますが、管理不全土地建物管理制度を活用することで、同様の目的を達成することはできないでしょうか?
- 小問1の答え
- 本件のような事案において、所有者不明土地建物の管理制度を使い、裁判所に所有者不明土地建物の管理人の選任申立をすれば、管理人において、隣地の廃屋を取り壊してもらえる可能性が高いといえます。
- 建物が築後90年を経過した廃屋であり、外壁や屋根が剥がれかかっている等、強風でこれらが飛ばされる危険があり、さらに、築後90年が経過しており、今後、建物として活用することが困難ということであれば、所有者不明土地建物管理人は、裁判所の許可を得て、自ら建物を解体するか、あるいは買主において建物を解体することを条件に、土地建物を売却する処理をする可能性が高いです。
- 管理対象となる土地建物の管理処分権は所有者不明土地建物の管理人に専属するものの、管理人が保存行為または性質を変えない範囲内での利用・改良行為を超える行為をするには、裁判所の許可が必要となります。そのため、本件のような建物の解体、不動産の売却のほか、債務の弁済、訴えの提起等は裁判所の許可が必要となります。
- もっとも、所有者不明土地建物管理制度は、所有者不明土地建物を解消すること、具体的には、所有者不明土地建物が適切に管理されず放置されることで周辺地域に悪影響を及ぼすことを防止することを目的として創設された制度であるため、周辺地域に悪影響を及ぼしている建物の解体、土地建物の売却であれば、所有者不明土地建物管理人は、価格が適正であることを条件に、解体・売却を積極的に行ってくれるものと考えます。
- なお、所有者不明土地建物管理人の報酬や経費は、不動産を売却することになれば、売却代金から支出されることとなり、余剰金については、不明所有者のために供託されることとなります。
- そのため、設例のようなケースでは、所有者不明土地建物管理制度を活用すれば、裁判所から選任された管理人と交渉をすることで、隣地の廃屋を取り壊すことができる可能性が高いですし、買取条件が折り合えば、廃屋の解体条件付きで隣地の土地を取得し、隣地を含めて建売分譲用地として事業計画に組み込むことができる可能性があります。
民法第264条の3(所有者不明土地管理人の権限)
1 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為民法第264条の8(所有者不明建物管理命令)
5 第264条の3から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。
- 小問2の答え
- 結論からして、管理不全土地建物管理制度を申し立てた場合には、裁判所から選任された管理人において、飛散しそうになっている建物の外壁・屋根を固定する等の保全措置を講じたり、生い茂っている雑草・樹木を伐採してもらう等の管理行為を行ってもらうことはできますが、これを超えて、管理不全建物の取り壊しをしたり、管理不全土地建物を売却してもらうことはできません。
- 管理不全土地建物管理人の権限は、基本的には所有者不明土地建物管理人の権限と同一ですが、対象土地建物の処分をすることについて裁判所の許可を得るには、所有者の意思を尊重する観点から、所有者の同意が必要となります(民法264条の10第3項)。
- そうすると、所有者に判断能力がなく、不動産の処分(建物の解体や土地建物の売却)について所有者の同意が得られない場合には、管理不全土地建物管理人が処分行為を行うことはできません。
- そのため、本件のような場合には、不動産の処分を行うには、本人に代わって財産の管理処分権を有する成年後見人を選任するしかありませんが、成年後見開始審判は、原則として、本人・配偶者・四親等内の親族しか申し立てることができないため、これらの親族の協力が得られなければ、手続を進めることはできません。
- 例外的に、65歳以上の者、知的障害者、精神障がい者について、「その福祉を図るために特に必要がある」との要件を満たす場合は、市町村長も成年後見開始審判の申立をすることができます。
本件でも、不動産の適切な管理がなされていないことに加え、不動産を売却しないと、施設の入所費用を支払えないといった事情があれば、役所と交渉することで、市町村申立が認められる場合もあります。民法第264条の10(管理不全土地管理人の権限)
1 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。
2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。民法第264条の14(管理不全建物管理命令)
4 第二百六十四条の十から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

